2020年4月に東京など7都府県で発令された緊急事態宣言以降、否応なしにリモートワーク中心の体制にIT業界の多くが移行して足掛け3年目に突入しました。

他の国や地域のチームやメンバーとのコラボレーションなど、リモートワーク的な要素はありましたがこれだけ長期化する事は個人的にも予想外でした。 そんな中で自分達の仕事の進め方を更に改善するにはどのような方法があるかに興味が出てきました。

そこで見つけたのがCourseraで公開されている講座”How to Manage a Remote Team“です。

今回はこの講座を無事受講して、認定証も発効されたので講座で印象に残った点やバックグラウンドをご紹介します。

フルリモートの雄、GitLabが提供する講座

この講座はソースコードの管理サービスを提供するGitLabがフルリモート企業として拡大していく中で得た学びを体系化し、講座として公開しているものです。 リモートワークに関する事だけではなく幅広いノウハウを文書化して公開しているGitLabなのでその情報量は非常に膨大です。

リモートワークの為のベストプラクティスをまとめたプレイブックや、大規模なアンケート調査のまとめなどがあります。

これらのドキュメントには本当に膨大な情報が纏められていますが、どこから見ていいか分かりづらいという悩みもあります。

そこで今回の講座はこれらの情報を段階を踏んで学んでいくコースにしているという点が活きています。 つまり膨大なドキュメントを読み進めなくても、順番に沿って講義を受けて課題を行う形で学んでいくことができます。

講座の構成

全体で4週間のカリキュラム構成になっており、それぞれの週で視聴する動画が40分程度あり、理解度クイズがあります。 課題を行う時間も含めて11時間となっていますが、もう少し早く終わったように感じます。まとまった時間が取れれば、どんどん先に進むことも出来るようになっています。

動画には残念ながら日本語の字幕はありませんが、英語のキャプションはついており再生速度なども変えられます。 各動画も数分の尺になっていて、モバイルアプリにも対応しており視聴環境は非常に良いです。 またグローバルな企業ということでかなりわかりやすい英語で話してくれますので、気になった所を戻ったり、翻訳にかけたりすれば英語に自信がない人でも挑戦しやすい部類かなと思います。 動画の完全なトランスクリプトもWebから確認できるのでDeepLなどにかけることも出来るでしょう。

これは講義の動画ではありませんが、GitLabのHead of Remoteで講師のDarren Murph氏のスピーチです。なんとなく雰囲気がわかるのではと思います。

最終課題は受講生同士の答案をピアレビューする形の課題です。 バーチャルな講座なのでクラスメートの存在をあまり感じづらいですが、他の受講生の答案や自分の答案への他の受講生のフィードバックは一緒に学んでいる感覚があってとても良かったです。 また隔週の課題でもフォーラムへの投稿を行うので、そこでやりとりが発生することもあるかもしれません。

最近はリスキリングとしてオンラインの講座などを受講する人が増えている気がしますが、自分にとってはこの講座があまり重すぎずよい入り口になりました。実体験も多い話題なので、リモートチームではこのようなタイプがある、なんていう話をされた時に自分の場合に当てはめて考えやすいのが良かったです。

印象に残った点

講座の体験そのものとは別に、特に印象的だった点が3つあります。

リモートチームへの移行は段階的なプロセス

否応なしになんらかの形でのリモートワークを行っている人が多いと思いますが、今の状態がベストだとは断言できない人が多いのでは無いでしょうか? この講座ではリモートチームへの移行はさまざまな段階があり、それぞれの段階の課題や自分たちのチームがどの段階にあるのかを考えさせる構成になっています。

各段階には「オフィスでの活動を全てバーチャルで模倣するスキューモーフィズム」や「オフィスとリモートチームが共存するハイブリッド」のようなよく見るタイプの課題になる点を指摘しており、ああ自分が感じていた違和感はこういうことだったのかという納得感がありました。

GitLabは完全なリモートチームですが、だからといってそれを無理強いしてくる構成ではなく実態にあった戦略を考えさせる構成になっています。

結果重視のマインドセット

リモートチームに移行する上では作業時間ではなく作業の結果を中心とした考え方に移行する必要があります。 これはエンジニアであれば消化したタスクの数やチェックインしたコードの数が中心であれ、作業時間ではないという事になります。

GitLabのようなソースコード管理、タスク管理をしていればエンジニアとってはスムーズな工程ですが、それが難しい職種や抽象的な領域もあります。そういった場合にどうやって結果重視のモデルに移行していくかということを考える事ができたのも印象に残りました。

講義の中では定量化しづらい業務の進捗をどのように計測可能にしていくかの考え方やプロダクト開発以外の領域も念頭においたセクションがあり考えさせられました。

カルチャーの重要性

オフィスがあり、対面でのコミュニケーションで言語化されずに継承されていた文化がリモートワークでは伝わりづらくなります。 スタートアップなどではミッションやバリューといった形で文化を明文化する事がよく行われていますが、こういった文化を明文化する事がリモートチームでは重要性が高くなります。 実際にさまざまな団体のカルチャーを表した文章を見ることで、自分たちの文化をどのように定義するか考える機会が持てたのもとても印象に残りました。

認定証の発行

コースの受講自体は無料ですが、修了証の発行と受講後のコンテンツへのアクセスにはコースの購入が必要な形になっています。(6000円) コースの購入は受講の途中や事後でも可能ですので、まずは受講を始めてみて後から購入できるというのはとても親切だなと感じました。

自分の場合は半分くらいまで受講した段階で、修了までやりきるという気持ちも込めて購入しました。使った時間と費用を考えた上でもとても満足のいく体験でした。

自分の組織やチームでのリモートワークの改善について考えたい、海外などでどのような取り組みが行われているかを知ってみたい、Courseraのようなオンライン講座に挑戦してみたいといった人にとってはおすすめです。